この本は、人材紹介会社を経営し、多くの定年前後の求職者と接してきた経験から、定年前後の「やってはいけない」ことを、仕事、お金、健康、人づきあいなど、様々な面からまとめたものです。
サブタイトルにもあるように、人生100年時代を見据えた働き方、生き方のヒントについて書かれた本ということです。
筆者の郡山史郎さんは、ソニーで取締役や本部長クラスまで勤められた後、関連会社の社長などを経て、67歳で再就職、69歳で人材紹介会社を立ち上げられたという経歴の持ち主です。
筆者は、定年後の働き方に関する本を書かれており、「九十歳まで働く!~ こうすれば実現できる!」(ワック)、「定年前後「これだけ」やればいい~人生後半40年に差がつく習慣」(青春出版社)、「定年格差~70歳でも自分を活かせる人は何をやっているか」(青春出版社)などがあります。
この本には、多くの定年前後に「やってはいけない」ということが書かれています。
そして、そのことは、カバーの袖にあるように「会社に定年はあっても人生に定年はない」ので、人生の後半戦を楽しむ生き方をしてほしいという著者の強い願いからだと思います。
人材紹介会社を経営し、多くの求職者の人たちをサポートしてきた著者だけに、とても明快で説得力のある助言が満載の本だと思います。
この本は、次の4章で構成されています。
- 第1章 「働かない老後」から「働く老後」へ ~意外と長い「定年後」
- 第2章 定年前後の「やってはいけない」 ~人生後半戦のスタートにはコツがある
- 第3章 いますぐはじめる暮らしの見直し方 ~お金、健康、人づきあい…はこう変える
- 第4章 人生100年時代を生きるヒント
この本の前半で、筆者は「「働かない老後」から「働く老後」へ ~意外と長い「定年後」」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 年齢を重ねるほど人生経験は豊かになり、これまで見えなかったものが見えてくるが、長生きには十分な準備が必要であり、これを怠ると老後破産、下流老人といった事態に見舞われる。
- 人生90年を45歳を境に分けた第1ハーフの特徴は「競争社会」である。第2ハーフに入ると競争意識はだんだん薄れ、お互いの不足を補い合うような「共存社会」になってくる。
この本の中盤で、筆者は「定年前後の「やってはいけない」 ~人生後半戦のスタートにはコツがある」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 雇用延長して、待遇でモチベーションを下げて働くより新天地で新卒社員のつもりで再出発を果たす方がベター。複数の仕事を持って個人事業主のように働き、収入を積み上げていくのが理想的。
- 定年後の収入を決定づけるのは、シビアな市場原理のみだ。「企業が求める能力」という需要と「求職者が持つ能力」という供給のバランスで決まる。
- 月収5万円の副業のような仕事しか見つからなくても、複数寄せ集めればそれなりの収入になる。働き口を複数確保できれば、社会との接点が増えるので、さらに声がかかる可能性も高くなる。
- ビジネスの最前線で働くことはなくても、陰から支える裏方役、縁の下の力持ち的な仕事でやりがいを得られるなら、きっと素晴らしい定年後を過ごせるだろう。
この本の後半で、筆者は「いますぐはじめる暮らしの見直し方 ~お金、健康、人づきあい…はこう変える」「人生100年時代を生きる」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 人生は第2ハーフになってはじめて、待遇や金額よりも、やりがいや生きがいを基準にした働き方ができるようになる。ギャンブルという無駄な遊びに貴重なお金と時間を費やしている暇はない。
- 定年前の人脈は、ほぼ役に立たないので、あてにしないことをお勧めする。前職で集めた名刺はすべて捨てよう。定年前の名刺を使った依頼や相談は、迷惑行為だと自覚すべきである。
- まずは、介護されない人生を目指して、仕事をして健康を維持し、子供の迷惑にならないように稼ぐことである。
- 40~50代の者は、身の回りのことは何事も自分でやるという生活習慣に改めておくことをお勧めする。定年後の再就職活動でも、自分で考えて自分で動く人はすぐに採用されやすい。
- 「働く」には、「傍(はた)を楽(らく)にする」「傍(はた)を楽(たの)しませる」という意味がある。第2ハーフでは、誰かの役に立つという幸せだけを追求して、自分自身も楽しんで働くことができる。