この本は、国税調査官という肩書を持つ筆者が、税制や年金の専門知識を基にして、定年退職後にお金を確保するテクニックについて書かれております。
ありとあらゆる手段を使って、「自分年金」を増やしていくための方法など、専門家ならではの色々な助言がなされています。
著者の大村大次郎さんは、元国税調査官で、国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後に経理事務所などを経て、ビジネス関連を中心としたフリーライターとなられました。
ビジネス誌、サブカル誌、単行本など様々な媒体で執筆しておられ、また、テレビドラマでも「マルサ!!」(フジテレビ)や「ナサケの女」(テレビ朝日)の監修を担当されました。
主な著書に、「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中公新書ラクレ)、「脱税のススメ」(彩図社)、「悪の会計学」(双葉文庫)、「お金の流れで見る世界史」 (PHP文庫)などがあります。
この本は、次の5章で構成されています。
第1章 公的年金だけでは、まともな老後は送れない
第2章 定年退職を迎えたら
第3章 年金不足分は投資よりプチ起業で補おう
第4章 リタイア後の住居で最後が決まる
第5章 賢い年金のもらい方と相続対策
この本の前半で、筆者は「公的年金だけでは、まともな老後は送れない」「定年退職を迎えたら」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- マクロ経済スライド方式は、公的年金の支給額を決める際に、物価や賃金だけでなく年金を支える現役世代減少や受給者長寿化などを反映させる仕組みで年金を目減りさせる。
- 生活費を現役時代の70%程度に抑えることに慣れておく必要があり、そのためにすることは生活のダウンサイジングで、遅くとも50代に入ってからは生活の無駄をなくす。
- 退職金のもらい方で「一時金」か「年金受け取り」かは、税金面では「一時金」の方が有利である。
- 60歳以降嘱託社員として再雇用となる場合などに給料が大幅減となることが多いが、一定の要件で最大で15%が国から補填される「高齢者雇用継続給付金」の制度がある。
- 雇用保険を受け取るなら65歳の誕生日の2日前までに退職をする必要がある。年齢計算の法律によれば65歳になるのは誕生日の1日前だからである。
この本の中盤で、筆者は「年金不足分は投資よりプチ起業で補おう」「リタイア後の住居で最後が決まる」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 退職金とはご褒美ではなく給料の後払いであり、大盤振る舞いをしていると老後資金が一気に目減りする。増やす方法として株の売買益をあてにするのは非常に危険である。
- 株価自体には目をつむり、一生売らないというくらいの覚悟をし、ただ配当金だけを目的とした場合は、株式投資はかなり有力な金融商品となり得る。
- 不動産投資は、不動産に関してよほどの知識、情報、余裕資金があり、絶対に収益を上げられるという物件を持つ人以外は、安易に手を出すべきではない。
- 定年退職者はプチ起業するのに非常に有利な立場であるが、5~10万円も稼げれば御の字と割り切り、借金をしないこと、大きな投資はしないことを心掛けるべきである。
- フランチャイズ経営は、苦労の割に儲からない特殊な会計方式や本部から課せられるノルマのため、老後はのんびりとマイペースで仕事をしたいと考える人には合わない。
- 会社組織と個人事業主のどちらにするかの分岐点は売上1000万円、所得400万円であり、これを超えるようであれば会社の方がメリットが多くなる。
- 会社をつくって、自身の報酬を抑え最低限度の社会保険に加入すれば、健康保険料が安くなり、公的年金にも入り続けることができる。
- 会社を設立すれば事業に少しでも関係するものが経費で落とせる。自身の報酬を抑えても諸費用を経費で支払うことができるので、生活レベルを落とさなくても済む。
この本の後半で、筆者は「リタイア後の住居で最後が決まる」「賢い年金のもらい方と相続対策」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 持ち家、借家どちらが得かについては、持ち家の場合の「精神的な安定感」や「家の資産価値」も含めて考量すると、老後は持ち家の方が有利ではないか。
- 定年後の田舎暮らしは、田舎の人間関係には非常に面倒な現実があり、安易に美化しすぎてはいけない。極端な田舎は、都会人はよほどの覚悟がなければ慣れることが難しい。
- 公的年金の最大のメリットは、「死ぬまで一定額をもらえること」とそれによる「安心感」であるので、遅く受給してその一定額をなるべく増やすことが得策と思われる。
- 相続税対策では、現金、預金で残すのが一番損ということである。土地・建物は時価より低めの評価になり、また、同居する住居相続の場合の特例(評価額80%減)もある。
- 配偶者がいる場合、最優先すべき老後資金は年金である。年金受給者が死亡し、配偶者が残された場合、一定の条件をクリアすれば配偶者は遺族年金をもらうことができる。