この本は、60歳という、一般に定年とされてきた年齢の時期には、壁がそそり立っているけれど、その壁を打ち破って、60歳以降も自分の力を精一杯発揮して「生きている感」を持てる第二の人生を過ごせるようしてほしい、ということについて書かれた本です。
筆者が、50代のころから、60歳以降の人生を見越して色々なチャレンジをされた経験に裏付けられて、書かれています。
筆者の植田統さんは、もともと都市銀行に勤務され、外資系コンサルティング等を経て、48歳でロースクールに入り勉強され54歳で弁護士になられた方です。また、大学のMBAコースで経営戦略を教えておられます。
主な著書に「日本的「失敗」の本質~29例に学ぶ没落のメカニズム」(朝日新聞出版)、「残業ゼロでも必ず結果を出す人のスピード仕事術」(ダイヤモンド社)、「捨てる7つの仕事の習慣」(PHP研究所)などがあります。
この本には、50代で弁護士に転向された筆者自身の経験や、会社員、弁護士、そして大学教授として多くの人々に接してきた経験に裏打ちされた教訓が満載だと思います。全体を通じて、筆者の前向きな姿勢が示されており、60歳の壁を前にひるんでいる人に対して、きっと力強く背中を押してくれるのではないでしょうか。
この本は、次の6章で構成されています
第1章 60歳の壁
第2章 Mindset:気持ちをリセットする
第3章 Strategy:80歳までの戦略を構築する
第4章 Execution:確実に実行する
第5章 Presentation:自分の見せ方を工夫する
第6章 Intelligence:必要な情報をつかむ
第7章 Strength:現役を続ける心と体の作り方
第8章 人生を再設計できる人、できない人
この本の冒頭で、筆者は「60歳の壁」として60歳の壁を打ち破った人の特徴と打ち破れなかった人の特徴について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 打ち破った人の特徴の一つは、決断力があり、実行力があることだ。多くの人に何となくビジョンがあり、やってみたいという気持ちがあるが、決断できず実現もできない。
- 打ち破れなかった人の特徴の一つは、骨の髄まで会社人間になり切ってしまい、会社の実力が自分の実力だと勘違いしている人である。それは会社の仕事だからできたのだ。
この本の前半で、筆者は「Mindset:気持ちをリセットする」「Strategy:80歳までの戦略を構築する」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 誰かが助けてくれるという気持ちではなく、ひとりで生きていく覚悟を持つ。腕一つで仕事をしている植木職人、取引先の零細企業のおやじさんたちから学んでいこう。
- 60歳以降の人生で過去の人脈を使おうとしてもダメで新しい人脈を作る必要がある。人脈作りのため一番大事なのは信頼関係を作ることと、焦らないことである。
- 過去のキャリアから専門分野を作り出す(自分の強みを再発見する)。自分で得意分野だと意識してないものが、外から見たら専門的分野だったということはよくある。
- 無駄なことを十年一日のようにやっていては自分が時代遅れになっていくだけ。おかしいと思ったら変え、それがうまく行かなければ戻す。シンプルに考えた方がよい。
この本の中盤で、筆者は「Execution:確実に実行する」「Presentation:自分の見せ方を工夫する」「Intelligence:必要な情報をつかむ」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 軍資金に余裕のある人は「仕事がうまくいっている」モードをはぐくむのに対し、余裕ない人は、交流会で会った時にいきなりセールスモードになってしまったりして敬遠される。
- 事務所を持つことのメリットは、緊張感が持てることやオフ・オンモード切替ができること、クライアントから見ても「あの人本気だな」と見てもらえるようになることである。
- あなたが知りたいことを一方的に質問しても、誰も答えてはくれない。あなたが価値ある情報を提供できてこそ相手も価値ある情報を与えてくれる(情報のギブアンドテイク)。
この本の後半で、筆者は「Strength:現役を続ける心と体の作り方」「人生を再設計できる人、できない人Execution」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 交流会での「仕事ください」というスタイルでは相手は逃げていく。他愛のない話で親近感を醸成し、人間関係を作ることを第一にして、ランチを食べたらよいと思う。
- ジムに通う、スポーツを始める、人間ドックに行く、オプション検査を受ける、すべてお金がかかるがここでお金を惜しんではいけない。体と健康は仕事を行うための資本である。
- 考えられる限りの楽観的シナリオを考え、周りの人に伝える。それに向かって走っているといつの間にかそれが実現する。信じる者は救われる。信じない者から幸運は逃げていく。