この本は、将来の働き方に不安を覚えるシニアサラリーマンに向けて、働けるうちは働き続ける「稼ぐ力」を身につけて、人生100年時代を豊かに生き残るための、実践的で具体的な働き方の「処方箋」について書かれています。
また、人手不足の今、経験豊富なシニアが活躍できる場はいくらでもあるとして、キャリアチェンジの成功事例を多数収録しています。
筆者の木村勝さんは、日産自動車の人事畑で長く勤められた後、関連会社で中高年のセカンドキャリア支援業務に従事され、2014年に52歳で人事を専門とする独立業務請負人として独立された経歴の方です。
中高年のキャリア相談などに取り組みまれ、著書には「会社を辞めたいと思った時に読むセカンドキャリアの見つけ方」(ビジネス教育出版社)、「働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書」(朝日新聞出版)などがあります。
この本は、次の5章で構成されています。
- 第1章 国も企業もあなたの面倒を最後まで見てくれません!
- 第2章 定年後の生活レベルは60歳までのすごし方ですべてが決まる
- 第3章 「働けるうちは働く人」になるためのセルフ意識改革
- 第4章 「働けるうちは働く人」になるためキャリアデザイン術
- 第5章 あなたのキャリア&スキルをお金に変えるための具体的な方法
この本の前半で、筆者は、「人生100年を展望した「国も企業もあなたの面倒を最後まで見てくれません!」「定年後の生活レベルは60歳までのすごし方ですべてが決まる」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 迫りくる年金改革に対応し、また、自分が下流老人とならないためにも、これからは国や会社に寄りかかるだけではなく、年齢にかかわりなく働き続けるシナリオを各自持っておくことが必要不可欠である。
- 役職定年・定年再雇用・中高年時のリストラなど、人によってモラルダウンのタイミングや要素は異なるが、絶対に避けなければならないのは「必要とされていない感」を抱えて何十年も無為に過ごすことである。
- 新卒で入社して以来、滅私奉公型のキャリアを歩んできたシニアの方は、就職氷河期という荒海を渡ってきた若手・ミドルに比較すると、自分の売り込み方が絶望的に下手であることを自覚する必要がある。
- 55歳でマインドをリセットし将来の方向性を見定め、60歳までの在職中に70歳、80歳まで働き続けられる「武器」を準備して、定年60歳で実行に移すのが、シニアのキャリアチェンジの王道である。
- 「生涯現役=働けるうちは働き続けるキャリア」を歩むために欠かせないのは、ある業務のまとまりを一人で最初から最後まで完結できる実務力「一気通貫実務スキル」である。
この本の中盤で、筆者は、「「働けるうちは働く人」になるためのセルフ意識改革」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 独自の専門性を効果的に発揮するためには、どの職域に転職したとしても必要とされる汎用性の高い3つの「ポータブルスキル」①対課題対応スキル、②対自己コントロールスキル、③対人対応スキルを兼ね備えておく必要がある。
- サラリーマン時代に、将来の自分の専門性の核になる領域のセミナーに関しては、自費を払ってでも参加しておくことを勧める。自分の知識・経験・スキル獲得のために戦略投資するかしないかで、のちのち大きな差が出てくる。
- 今までのキャリアを「関係性」という観点から抽象化し、業種・職種といった枠組みを超えて、自分とは関係ないと思っていた遠い領域で適用してみると、「自分の当たり前」が、実は貴重なノウハウだったということも多々ある。
この本の後半で、筆者は、「「働けるうちは働く人」になるためキャリアデザイン術」「あなたのキャリア&スキルをお金に変えるための具体的な方法」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 若いうちは「出世エンジン」と「自律エンジン」の両方を吹かしていく必要があるが、シニアになってからは「自律エンジン」で60歳定年まで達しなければならない。その際に必要な燃料は「個人としての成長戦略」「個人ノウハウの見える化」「個人的な外部ネットワーク構築」である。
- 人生100年時代は、今までつちかってきた自分のキャリアを棚卸しして、自分の商品としてきちんと「見える化」しておく必要がある。
- 人の話を最後まで聴けない「パワハラ系シニア」は絶対に成功しない。話をよく聴き、寄り添うようにサポートできるスキルは必要不可欠になる。
- シニアからのキャリアチェンジで最も重視されるのは人柄である。人柄は、なかなか可視化しづらいポータブルスキルであるが、「聴く力」を身につけることでかなりの部分をカバーできる。
- シニアはせっかく素晴らしいキャリアを持っていても見せ方・売り込み方の稚拙さで損をしている。SNSによる積極的な情報発信はシニアに求められる基本的スキルになっている。
- シニアからのキャリアデザイン5原則は、①収入は細く長く面積で考える、②経験こそ商品、③キャリアは複線化、④雇用にこだわらない、⑤気持ちは個人事業主、である。
- シニアで独立の場合は、初めから大きなディールを狙わず、まずはたとえ売り上げはわずかであってもコネクションを作ることに価値を置くべきである。「1か所から30万円の売上げ」ではなく、「3万円×10か所」の考え方である。