この本は、人生100年時代を迎えて、深刻化する「定年後の3大不安」である「カネ」「孤独」「健康」の不安について、どのようにして解決していけば良いか書かれた本です。そして、それらの不安をいっぺんに解決する最善の方法は、「85歳まで現役で働くこと」ということを筆者の出した結論だとしています。
筆者の大杉潤さんは、日本興業銀行に22年間勤務後、東京都に転職して、新銀行東京の創業メンバーとして銀行を立ち上げ、その後、その後、人材関連会社、グローバル製造業の人事・経営企画の責任者を経て2015年に独立起業、合同会社ノマド&ブランディングを設立し、チーフコンサルタントになられたという経歴の方です。
現在は、フリーの研修講師、経営コンサルタント、個人向けコーチ、ビジネス書作家として活動されており、著書に「入社3年目までの仕事の悩みに、ビジネス書10000冊から答えを見つけました」(キノブックス)、「定年ひとり起業」シリーズ(自由国民社)など多数あります。
この本は、次の5章で構成されています。
- 第1章 人生100年を展望した「キャリアプラン」とは?~三毛作の人生を目指すトリプル・キャリア
- 第2章 100年人生の「時間術」~人生を俯瞰して「人生設計図」を作る
- 第3章 100年人生の「コミュニケーション術」~「孤独」とは無縁の仲間づくりの秘訣
- 第4章 100年人生の「情報リテラシー」~インプットとアウトプットのバランスが大切
- 第5章 100年人生の「健康法」 ~情報過剰の時代にいかに正確な情報を取るか
この本の前半で、筆者は、「人生100年を展望した「キャリアプラン」とは?」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 働く期間を①会社員として「雇われる」働き方、②遅くとも60歳の定年退職時からの「雇われない働き方」、③70代くらいからの「理想の働き方」に3区分して、戦略的にキャリアを作っていくことで長く仕事ができるようになる。
- 長く働き続けるためのポイントは、人生・キャリアの棚卸しをした上で、自分のプロとしての「専門性」、「好きと得意」、「社会ニーズへの貢献」の3つを組み合わせて、自分だけが世の中に提供・発信できる価値を作りあげていくことである。
この本の中盤で、筆者は、「100年人生の「時間術」」「100年人生の「コミュニケーション術」」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 45歳前後で、会社キャリアの転機を迎え、何らかの挫折を味わう人が多いが、この「45歳転換期」に気持ちを切り替えて、前向きにその先の「人生設計図」を描き直してみることを勧める。
- 55歳の「役職定年」を迎えてから、それまでの業務知識、経験、スキルをノウハウという形でアウトプットにして、部下・後輩に教えたり伝えたりする経験は、60歳・65歳以降の仕事に活きてくる。
- 65歳の壁を超えて働き続けるためのポイントは、①人の役に立つ専門性を磨き上げ、長く続けられる好きなことをする、②変化する社会のニーズに対応できるよう学び続ける、③健康・体力維持のための生活習慣を確立する。
- 75歳の壁を超えて長く働き続けるには、①働く「時間」を制限する、②働く「場所」を制限する、③受け取る「報酬」も制限するがゼロにはしないという3大原則を守ることが重要である。
- 定年後に新たなコミュニティーに入って、人間関係を作っていき、仲間を増やし、かつ長くその関係を維持していくためには、自分と違うタイプの存在を認め、許容していく柔軟性が大切である。
この本の後半で、筆者は、「100年人生の「情報リテラシー」」「100年人生の「健康法」」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- メディア情報は断片的なものになるのが避けられないが、書籍の場合は質の高いまとまった「情報の塊」として、いっぺんに知識や筆者の経験、場合によっては「人生まるごと」を追体験することもできる。
- 本は読むだけでは有効なインプットにならない。3ステップのアウトプットとして①要点をメモに書く、②時間をおかずツイッターでポイントをアウトプットし、③ブログの記事として整理した情報を発信・公開するのが有効である。
- 完全に仕事を引退すると、そこで一気に人間関係がなくなり、会話も少なくなる。人と会話や交流があることが認知症にならないポイントと言われているので、働き方を変え、ペースを落としても長く働くことは大切である。