この本は、役職定年、早期勧奨退職の動きに加え、老後資金、年金の不透明感などで、先行きに不安を覚える50代の会社員にとって、年金という生活保障の土台は確保しつつ、お金の安心と「やりがい」という「+α」を手に入れるために何をしておくべきなのかについて書かれた本です。
50代は人生の頂点(ピーク)に向かう助走路であるとしています。
著者の池口武志さんは、生命保険会社に長く勤務され、人材育成などに携わった後、一般社団法人定年後研究所の設立を担当し、その理事や所長を歴任されています。
「定年前後」に関する様々な調査・発信活動をされており、著書に「定年NEXT」(廣済堂新書)があります。
この本は、次の6章で構成されています。
- 第1章 まずは「お金の不安」を解消する
- 第2章 「働く環境の変化」に対応する
- 第3章 「自分の価値」を再発見する
- 第4章 50代からのキャリア相談最前線1
- 第5章 50代からのキャリア相談最前線2
- 第6章 いざ“人生の頂点”に向けて
この本の前半で、筆者は、「まずは「お金の不安」を解消する」「「働く環境の変化」に対応する」「「自分の価値」を再発見する」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 再雇用を選ぶのであれ、違う働き方・働き場所を選ぶのであれ、「周りから必要とされる」やりがいのある仕事や職場を自ら選び取り、「高い生きがい=幸せにつながる働き方」を実現していくことが欠かせない。
- 「定年」は職業人生からの引退を意味するのではなく、新しい職業人生への「玄関口」「踊り場」へと変容を遂げつつあるのは間違いない。
- 60歳、65歳からのキャリアチェンジに成功する人、苦戦を強いられる人の差は、50代からの意識の持ち方が大きな分かれ目になっている。
この本の中盤で、筆者は、「「自分の価値」を再発見する」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- これまでの経験を振り返り、客観的に自分を見つめ直す「自己理解作業」により、自分の強みが見えてくると同時に、新たな目標、その実現に向けてのやる気やエネルギーも湧いてくる。
- 自己理解作業のフレームワークは、WILL「自分のやりたいこと」、CAN「自分のできること」、MUST「会社や社会から期待されている役割」である。
- これまでのさまざまな経験を振り返り、自身の志向や嗜好を発見するのがWILLの作業で、やりたい仕事を職種で考えるのだけではなく、「働き方や生き方」まで範囲を広げてみることも大切である。
- CANは自らの体験や能力を因数分解して、普遍化する作業で「経験・能力の棚卸し」といい、自身の強みやスキルを可視化でき、これから目指すキャリアの方向性を明確にすることができる。
- WILL(やりたいこと)とCAN(できること)の領域を拡げておけば、MUSTのカバー範囲も広くなり、中高年以降も仕事の選択肢が増える。
この本の後半で、筆者は、「50代からのキャリア相談最前線」「いざ“人生の頂点”に向けて」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 「50代からのキャリア相談最前線」として9名の専門家の声を筆者が咀嚼してセカンドキャリアで成功する5つの心得を以下のようにまとめていて、
- 今も含めた一つひとつの仕事と真剣に向き合い、謙虚に自分という心のOSを大きくしていくことが年齢に関係なく大事である。
- 自分の志向や強みを端的に語れることは、必須の通行手形である。
- 世の中の動向にアンテナを立てて、自らのWILLやCANとの接点がありそうな社会ニーズMUSTをキャッチして、知らない情報であれば詳しく調べてみる。その繰り返しが新たな人脈づくりや活動場所の発見につながる。
- 最初の一歩目から成功を求めがちな傾向にあるが、まずは考えるよりも行動、いろいろ試してみるフットワークの軽さが必要である。
- 一つの会社で階段を上がってきた人は、会社での評価と市場での評価がズレがちであり、自分の市場価値を冷静に判断することが必要である。