はじめに ~家族が遠方にいる高齢者の不安と備え
高齢になると、入院や施設入居、役所での手続など、どうしても家族の立ち会いが必要になる場面が増えてきます。ところが近年は、子どもが県外や海外に住んでいるケースも多く、「いざという時に駆けつけられない」というご相談をよくいただきます。
「入院が決まったけれど同意書を出す人がいない」「施設の契約をしたいが家族が来られない」――こうした状況は決して珍しくありません。そのときに役立つのが「代理人のサポート」です。
実務上は「任意代理契約」「事務委任契約」「日常生活支援契約」などの名称で呼ばれることもあります。この記事では、それらを総称して「代理人のサポート」としてご紹介します。

代理人のサポートとは?
代理人のサポートとは、委任契約を結んで特定の手続や対応を信頼できる人に任せる仕組みです。成年後見制度と異なり、ご本人の判断能力がしっかりしている段階から利用できる点が大きな特徴です。
委任状や契約書を整えておけば、家族の代わりに代理人が病院や施設、役所に出向き、必要な書類を提出したり、契約を進めたりできます。「家族が遠方にいるから無理」とあきらめていたことも、事前の準備でスムーズに対応できるようになります。
代理人のサポートが役立つ場面
代理人のサポートが特に活躍するのは、次のような場面です。
- 入院時の事務手続(書類提出や窓口対応)
- 施設入居契約(契約書の署名・必要書類の提出)
- 役所での手続き(住民票や印鑑証明の取得など)
- 日常生活の契約(公共料金や携帯電話の解約など)
たとえば、一人暮らしの高齢者が突然入院することになった場合、遠方に住むご家族がすぐに駆けつけられないことは少なくありません。こうしたとき、事前に代理人のサポートを準備していれば、入院手続が滞りなく進み、ご本人もご家族も安心できます。
ただし、代理人にすべてを任せられるわけではありません。医療行為に関する同意や、銀行での口座解約・振込などは、原則として本人や親族、あるいは成年後見人でなければ対応できない場合があります。
実際に代理できる範囲は、病院や施設、役所、金融機関などによって異なります。大切なのは、どの手続を代理人に任せられるかを事前に確認し、できる範囲を契約書に具体的に書き込むことです。

契約は書面で、公正証書にしておくと安心
代理人のサポートを利用する際には、口頭の約束ではなく必ず契約書を作成しましょう。さらに確実性を求める場合は、公正証書にしておくことをおすすめします。
公証役場で作成した公正証書にしておくことには、次のメリットがあります。
- 証明力が高い:公証人が内容を確認して作成するため、本人が確かに合意した証拠となる。
- 法的な適正の確認:公証人の確認により、重大な不備や無効を避けやすい。
- 病院や施設、役所などに信用されやすい:私文書よりも安心して受け入れられやすい。
- 長期的に安心:原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない。
財産管理を含む場合はもちろん、日常的な手続であっても、将来に備えて公正証書で契約を残しておくことをおすすめします。病院や施設、役所などに示すときの信頼性が格段に高まり、安心して利用できるからです。

他の制度との違いと組み合わせ
似たような制度として「成年後見制度」や「任意後見契約」があります。
- 成年後見制度:判断能力が低下した場合に家庭裁判所が後見人を選任する制度。
- 任意後見契約:将来の判断能力低下に備えて契約しておき、実際に発動するのは後から。
- 代理人のサポート:ご本人が元気なうちから利用でき、日常的な手続を柔軟に任せられる。
成年後見制度や任意後見契約と比較して、代理人のサポートはご本人が元気なうちから使える仕組みであり、「今すぐの安心」を実現する方法といえます。
実際の現場では、これらを単独で利用するよりも、「代理人のサポート」+「任意後見契約」+「死後事務委任契約」 を組み合わせて備えるケースが多く見られます。
このように準備しておけば、元気なうちの日常生活から、そして判断能力が低下した後、さらに亡くなった後の必要な手続や届け出まで、一貫した安心できる備えをすることができます。

行政書士ができるサポート
代理人のサポート契約を結ぶ際には、任せたい範囲を整理し、適切に書面化することが重要です。行政書士は次のようなお手伝いが可能です。
- 委任契約書や委任状の作成支援
- 契約範囲や注意点の整理
- 成年後見制度や任意後見契約との比較説明
- 公正証書作成のサポート(文案作成、公証役場との調整)
- 契約内容を明確にし、安心して利用できるよう助言
また、状況によっては行政書士自身が代理人としてサポートに入ることも可能です。ご親戚や知人にお願いするのが難しいときには、専門家に依頼するという選択肢も用意しておくと安心です。
専門家が関与することで、ご本人もご家族も安心して利用できる環境を整えることができます。

まとめ
代理人のサポートを検討する際のポイントを、最後にまとめておきます。
- 家族が遠方にいるときの不安を解消する手段として、「代理人のサポート」という仕組みがあります。
- 入院や施設入居、役所・銀行での手続など、幅広い場面で役立ちますが、代理できる範囲には制限があります。
- 契約は必ず書面にしておくことが大切で、公正証書にしておくとより安心です。
- 任意後見契約や死後事務委任契約と組み合わせることで、切れ目のない備えをすることができます。
- 行政書士に相談することで、安心して利用できる環境を整えることができます。
「まだ元気だから大丈夫」と思っている今だからこそ、準備をしておくことが将来の安心につながります。
行政書士ストック法務事務所は、川崎くらし安心パートナーズの一員として、あなたの不安を、安心に変えるサポートに取り組んでいます。
