前回の投稿「成年後見制度について↗」において、成年後見制度の概要を記述しました。その際、成年後見制度は、次のとおり、大きく法定後見制度と任意後見制度の2つの制度に分けられるとしました。
- 判断能力が既に不十分な状態にある方が利用するのが法定後見制度
- まだ判断能力が十分な状態の方が利用するのが任意後見制度
すなわち、法定後見制度は、すでに判断する能力が低下している場合に、本人の個別事情に応じて、家庭裁判所が適切な援助者(成年後見人等)を選び、その援助者が、必要なサポートを行うというものです。
これに対して、任意後見制度は、十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になる場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(=任意後見人)に、自身の生活、療養看護、財産管理などに関する事務について代理権を与える契約(=任意後見契約)を締結しておくというものです。
契約については、公証人の作成する公正証書により行われます。この契約は、他者に様々な事務を任せることを目的としていますので、委任する本人の意思を確認し、また、契約の内容を法律に従った正当なものとするため、契約の方式として公正証書を作成することが法律に定められているのです。
契約しておくことで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督の下で、本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思に従った適切な保護・支援をすることが可能になります。
このように、任意後見制度は、現在、本人の判断能力に問題はなく、今は何でも自分で決められるけれども、将来が不安だという方が利用できる制度であるということができます。