はじめに ~「まだ元気だけど、もう準備した方がいい?」
高齢者支援のご相談を受けていると、
「日常サポート契約は、いつ結ぶのがよいのでしょうか」「まだ元気なので、少し早い気がしていて……」
といった声をよく耳にします。
前回のコラムでは、日常サポート契約で「できること・できないこと」を整理しました。今回はその続きとして、「いつ準備するのが適切なのか」というタイミングの問題について考えてみたいと思います。

「早すぎる」と感じてしまう理由
日常サポート契約を検討するとき、多くの方がまず「まだ早いのでは」と感じます。
その背景には、次のような理由があります。
- 介護が必要な状態ではない
- 日常生活は特に問題なく送れている
- 契約という言葉に、少し大げさな印象がある
「困ってから考えればいいのでは」と思うのも、自然な感覚といえるでしょう。

実務では「元気なうち」が前提になる
一方で、実務の現場では、日常サポート契約は判断能力がしっかりしているうちに結ぶことが前提になります。
元気なうちであれば、次のメリットがあります。
- 本人の希望を丁寧に反映できる
- 任せたい範囲を落ち着いて整理できる
- 家族や支援者と十分に話し合える
体調や判断力に不安が出てからでは、内容を詰めきれないことも少なくありません。

「少し遅かった」と感じる場面
一方で、日常サポート契約は「何でも任せられる契約」ではありません。たとえば、次のようなことは、原則として本人や相談の中で、「もう少し早く準備していれば」と感じる場面もあります。
たとえば、次のような場面です。
- 入院が決まってから、慌てて手続きを考える
- 書類の説明をしても、理解に時間がかかる
- 家族間で意見が分かれ、話し合いが進まない
こうしたケースを見ると、「早すぎるかどうか」よりも、状況が変わってからでは遅くなるという側面が見えてきます。

判断の目安は「年齢」ではなく「生活の変化」
日常サポート契約を考えるタイミングは、年齢で決めるものではありません。
一つの目安になるのは、次の点です。
- 入院や通院の機会が増えてきた
- 契約や手続を負担に感じるようになった
- 家族が遠方に住んでいて、頼みにくい
こうした変化が見え始めたときは、準備を考えるよいタイミングといえます。

任意後見契約との関係
日常サポート契約とあわせて、任意後見契約との関係について質問を受けることも多くあります。
整理すると、次のとおりです。
- 日常サポート契約は「今」の生活を支えるための契約
- 任意後見契約は、将来の判断能力低下に備える契約
実務では、まず日常サポート契約で現在の生活を支え、その後に任意後見契約を検討するという流れを取る方が多く見られます。
両者は対立するものではなく、役割の異なる契約と考えると分かりやすいでしょう。

公正証書にするタイミング
日常サポート契約は、書面で残すことが大切です。
さらに、公証役場で公正証書として作成しておくことで、将来の安心につながります。
迷っているうちに体調や状況が変わってしまうと、公正証書の作成自体が難しくなることもあります。
余裕のある段階で作成しておけば、内容を見直すこともできますし、気持ちの面でも安心です。

準備の進め方について
日常サポート契約や任意後見などは、すぐに結論を出す必要があるものではありません。
市区町村には、高齢者の暮らしや今後の不安について相談を受けている窓口があります。
また、書類や契約の整理が必要な場面では、行政書士などの専門職に話を聞きながら、少しずつ考えていく方もいます。
相談を通じて、自分に合った準備の進め方が見えてくることもあります。

まとめ
日常サポート契約は、「早すぎるか、遅すぎるか」で考えるものではありません。大切なのは、生活の変化と本人の意思です。
「まだ元気だからこそ」落ち着いて考え、準備しておくことが、結果的に一番自然で安心できる備えにつながります。
行政書士ストック法務事務所は、川崎くらし安心パートナーズの一員として、あなたの不安を、安心に変えるサポートに取り組んでいます。


