この本は、銀行員から作家になった筆者の経験を通して、定年前後どのように過ごせば、収入を得ながら新たな人生を過ごすことができるかについて書かれた本です。
全体を通して合計50個の「〇〇〇の壁」と題して、定年後に立ちはだかる様々な壁を示し、そしてそれを乗り越える方法を助言しています。
筆者の江上剛さんは、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行後、築地支店長時代の2002年に「非情銀行」作家デビューされ、2003年、49歳で同行を退職し、執筆生活に入られました。その後、日本振興銀行の社長就任、破綻処理など波瀾万丈な50代を過されたということです。
ビジネス書では、「ビジネスマンのための「幸福論」」(祥伝社新書)「会社という病」(講談社+α新書)、「会社人生、五十路(いそじ)の壁 サラリーマンの分岐点」(PHP新書)、小説では 「失格社員」(新潮文庫)、「ラストチャンス 再生請負人」(講談社文庫)、「我、弁明せず」(PHP文芸文庫)、「庶務行員 多加賀主水シリーズ」(祥伝社文庫)などの多数の著書があります。
この本は、次の7章で構成されています。
- 第1章 60歳からは自分の楽しみのために働け
- 第2章 世間と関われば、自然にお金は得られる
- 第3章 今のうちに「好きなこと」に投資しなさい
- 第4章 シニア起業は「正直」を貫け
- 第5章 利害関係でなく個人の魅力で人とつながる
- 第6章 家族には愚痴ではなく仕事を語れ
- 第7章 人と分かち合えば健康になれる
この本の前半で、筆者は、「60歳からは自分の楽しみのために働け」「世間と関われば、自然にお金は得られる」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 60歳65歳で意に沿う仕事はない。企業は、そんな高齢者より若い人を採用した方がいいのだから当然だ。この現実をしっかりと自覚し、本気で納得できたら、仕事は向こうからやってくる。【専門性の壁】
- 元の勤務先のブランドをどれだけ早く捨てられるかが、その後の生き方を決定づけるのではないだろうか。過去を振り返らない。これが退職後の人生の生き方の基本原則だ。【プライドの壁】
- 元気なうちは収入の多寡に関係なく、健康管理のためだと思って働き続けることだ。若い人の邪魔にならず、昔の経験におごらず、謙虚に仕事をしていれば給料と年金とで十分に暮らせるとわかるだろう。【給料減少の壁】
- 年金だけでは、暮らしに十分ではない。しかし、お金がたくさんあるからといって楽しい老後かと言えばそうでもない。世間と関わりを持ち続け、何かお役に立ちたいという思いと行動が一番大切なのではないか。【年金の壁】
この本の中盤で、筆者は、「今のうちに「好きなこと」に投資しなさい」「シニア起業は「正直」を貫け」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 60歳を過ぎたら、昨日と同じ日が明日も続くと思いがちだ。何もかも変化を嫌い、停滞する。しかし、自らの意志で、リスキリングに取り組めば、人生が二度おいしくなるかもしれない。【リスキリングの壁】
- 60歳を過ぎての起業はリスクが高い。それでも起業するなら、大儲けしてやろうなどという妙な野心は抱かず、自分の力量の範囲内で、リスクを最小限に抑えることを考えるべきだろう。【リスクの壁】
- 定年後に起業したいと思ったら、大手銀行ではなく、地元の信用金庫、信用組合に相談すべきだ。彼らは、地元に少しでも会社を増やしたいと熱望している。それが本来の業務だと心得ている。【起業時の口座開設の壁】
この本の後半で、筆者は、「利害関係でなく個人の魅力で人とつながる」「家族には愚痴ではなく仕事を語れ」「人と分かち合えば健康になれる」について書いています。印象に残ったのは次のような点です。
- 今まで会社という組織の中で面倒な人間関係に苦労しただろう。退職したらそうした苦労はなくなる。自分の好きな人間関係を築き、嫌なら離れることもできる。孤独になれば、そんな自由を得られる。【孤独の壁】
- 一つ提案したいのは、集まりに参加した際に知らない人にもにこやかに挨拶することだ。これだけであなたの評価が上がること請け合いである。挨拶には、人と人の距離を縮める効果がある。【友人の壁】
- まず「家族のために働いてきたのに」という思いを払拭しよう。ましてや口に出して言ってはいけない。感謝の押し付けをする必要はない。淡々と暮らそうではないか。【家族の壁】
- 定年後は新しい自分に生まれ変わるためにも断捨離は必要だ。個人的な物は捨てられなくても仕事に関するものは思い切って捨てよう。さみしさを感じるだろうが、しがみついていたら、うるさい小言老人になるだけだ。【断捨離の壁】